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『毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記』(北原 みのり 著)

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⭐️⭐️⭐️⭐️


初めて読む裁判傍聴記。
裁判が公平に行われて欲しいと思うのと同時に、傍聴記も公平に行われて欲しいと、思う自分は、最初の数ページで、ど肝を抜かれた。
どんだけ、木嶋佳苗が好きなんだよ!作者!
 
作者の描写する被告は、身のこなしがエレガント。鈴が鳴るような魅力的な声(確かにそいつは重要な要素だ!)。料理上手の床上手。文章のセンスは一般的なレベルをはるかに上回る、頭の回転のすこぶる速い女性。
 
読めば読むほど、木嶋佳苗が好きになっていく!
こ、こえー!
 
20歳の頃なら、鼻で笑っていたこの事件も、中年になると、全然笑えない。
容姿が良くなかったとしても、料理上手の床上手で、自分のことを好きだという30くらいの女性に、40歳越えの彼女いない歴=年齢の人間が、あらがえるのか?無理だよ!
年々、人は孤独に弱くなるんだぜ!
母親にズボンを買ってもらってるオジさんは無抵抗に木嶋佳苗の侵略を受け入れるしかないよ!
 
木嶋佳苗は家庭的で結婚願望のある女性観と、合理的でサバサバした上昇志向の強い独立した女性観が矛盾せずに同居していて、それを全体から俯瞰している彼女自身がいる。と、あったが、ある意味現代を生きる人の理想像だとも自分は思う。
 
ジョージ・オーウェルの名著『1984』にあるダブルシンクはフィクションではない。
現実に存在する概念だと思う。
10年ひと昔と言われて久しく、5年後のことは誰もわからない今、現代を生きる私たちは、幾度も価値観の変換期を乗り越えて、生きる。
大昔の事は分からないのであくまで推測になるが、ばあちゃんの幼少期の女性観と成人してからの女性観はほぼ同じはずだ。
だが、今は5年ごとに価値感が更新される。
10年前の憧れが侮蔑の対象になったりする事が平気で起こる。
だが、いちいち自己矛盾を起こしてられないので、時代ごとの価値観を自らの中に共生させて生きかなくてはならないのである。
それは、時には自覚的で、時には無自覚だ。
誰にでも起こる。(起こらない人は、霞食ってる人か、変人か、その両方だろう。)
 
自己矛盾のない木嶋佳苗に憧れる筆者の痛みは良くわかる。